A Moon Calendar of the people

自宅の玄関にて2006年6月 岐阜県 八百津 ナオキ君宅

2006年6月23日、木曽川沿いを車で走っている途中、八百津(やおつ)という、日本の真ん中に位置している町を通った。川沿いの道が崩れて通れないため、仕方なくすごく遠回りな迂回路を通っていた。すると佳子が言った。「この近くにカレンダーを買ってくれたナオキ君が住んでいる」と。佳子が電話で話し、一晩お世話になる事に。

途中まで車で迎えに来てくれて、「じゃあついてきて」と。進む先は山奥の中の山奥、「本当にこんなところに人が住んでいるのかなぁ」と2人で話ながら道を20分ほど走った所に現れたのはどこの金持ちが建てたんだろうと思うようなログハウス。まさかと思ったけれどそこがナオキ君の家だった。家の外にはローズガーデン、同じ谷には隣に住むおばあちゃんが一人いるだけという、すごくのんびりとした時間が流れている空間だ。

ログの小口にかかるカレンダー そんなログハウスに1人で住んでいるナオキ君。僕は初めて、佳子は1度しか会っていないナオキ君だが、気持ち良く僕達を向い入れてくれた。お邪魔させてもらうと、物がすごく綺麗に片付けられていて、ホコリを探すのが難しい室内。普段使っている道具類を見せてもらうとすごく大切に使っている様子。道具好きな僕は見ているだけで嬉しくなってしまった。ひとつひとつのいい道具を大切に使う、道具を使ったその先に心が通じやすくなるように思える。使えば使うほど手に馴染んでくるあの感覚は、やっぱり大切にする気持ちから生まれてくるものだろう。

3人でご飯を作り、3人でご飯を食べる。久しぶりに屋根の下で食べたご飯はとっても美味しく感じた。ちょっとお酒を飲んで宇宙の話、八百万の神様の話、これからの生活の話、明日の話などなど、今、僕達がここに来て旅の話をしたり、ナオキ君の話を聞いたりする事が完璧なタイミングなんだと感じるほど素敵で楽しい時間を過ごした。
そんなナオキ君、「太陽と月のまつり」というお祭りを中心になって始めた人でもある。「はからめ」とピッタリなタイトル。月の事や太陽の事、植物の事、体の事を真剣に考えている人なんだなぁと感じた。部屋にちょんと掛かっている月のカレンダー、我ながらこの家にぴったりのカレンダーだと思う。どこに行ってもそう思うのか僕は・・・・・。

最近はギターとジャンベ(アフリカの太鼓)にはまっているナオキ君 最近ナオキ君は田んぼでお米作りを始めたという。不耕期というお米の作り方を皆さんはご存知だろうか?田んぼを耕してから水を張り、苗を植え、草取りして、などなどいろいろ手間がかかり、まじめで「本業はお米作りです。」というような人じゃないとお米なんか作れないというみんなの頭の中にも少しは入っているであろう、お米作りのイメージ。しかしこの不耕期は、名前の通り耕さないでお米を作るという、なんともラクチンな方法。稲と一緒に雑草も生やしっぱなし。稲をVIP待遇で育てるのではなく、「かわいい子には旅をさせろ」といったような育て方だ。まずは水を張らずに雑草などと競い合わせて強く丈夫な稲に育たせる。稲が大きくなってきたその頃には草も一緒にぼうぼう生えている。そこで初めて水を張ると稲以外の草は水に弱いので一気に駄目になってしまうので、そうなったら後は稲がぐんぐん伸びるだけ。もちろん農薬などは使わない。と簡単に言うとそんなお米の作り方(僕はやった事がなく聞いただけなので正確には間違っているかもしれない)。
しかしナオキ君は考える。昔の人は戦争などで、自分が作ったお米が自分の口に入らない時代を生きてきた人たちは、お米作りに対してそんなに甘くは考えられない。いま若い人達に広がる、より自然に近い方法と、昔からのお米作りに対する精神をつなぎ合わせるような事ができたら良いけれど、それはかなり難しい事であると。

そんないろいろな立場になって考えているナオキ君がこの先築きあげるナオキ流お米作り、そしてナオキ流人生が、どんな展開になるのかがとても楽しみだ。これからの旅の間、日本の真ん中、八百津による理由が1つできてしまった。  (匠)

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